Dreams come true...
「……さん 起きて下さい。 高耶さん…」 鼻腔をくすぐる嗅ぎ慣れた香りと共に、自分の名を呼ぶ声がする。高耶はまだ覚醒しきらない頭でぼんやりとその声を聞いていた。耳元でやわらかく囁く、優しく包み込むような声だ。 このまま囁かれていたな…とまた眠りの淵へ引き戻されそうになった一刹那、それは起こった。 「ひっ!おまえっ!朝っぱらからなんてことするんだよ!」 真っ赤になった高耶が、舌を差し込まれた耳元を押さえながら男を睨み付ける。 だが、この男はこんなことは日常茶飯事なのだろう。悪びれることもなくいけしゃあしゃあと言ってのけた。 「あなたがなかなか起きて下さらないからですよ。 ……それとも、もっとして欲しくて寝たふりしていたの?」 低く囁かれた言葉に、思わず高耶の心臓が跳ねた。 意味ありげに笑むこの男の笑顔は、昨晩の情事を思い起こさせる。朝っぱらから心臓に悪い男だ。 高耶はその名残が色濃く残る身体をけだるそうに起こしながら、直江が運んできたモーニングコーヒーを受け取った。ふんわりとミルクの甘い香りがする。今朝はカプチーノのようだ。 きめ細かに泡立てられたミルクがエスプレッソの中に溶け込んでいくのをじっと見つめながら、添えられたシナモンスティックでゆっくりとかき混ぜる。すると、微かにシナモンのスパイシーな香りが漂った。眠気を覚まさせるようなその香りを聞きながら、高耶はそっと一口飲んでみた。口中にエスプレッソの苦みとミルクのまろやかさが程良く広がる。相変わらず、この男の煎れるコーヒーは美味い。 高耶はいつ何時飲んでも変わらぬそれに、この男が誓う不変性を重ねていった。 (あなたを想う気持ちは永遠に変わらない) そう誓われた時から、いやその誓い以前にこの男は自分に対して不変であることを示し続けてきた。 どのような時にでも変わらぬ優しさ、変わらぬ温もり、変わらぬ愛を… たった一杯のコーヒーなのに、そこから愛情が溢れてくる。 そんな溢れる物を嬉しくも、くすぐったくも感じながら、素直にはなれないのが高耶だ。 高耶はカップから静かに口を外すと、少し揶揄するように感想を漏らした。 「おまえって、コーヒーだけは煎れるの上手いよな」 相変わらずな彼の言葉に苦笑しながら、直江はそっと顔を近づけてきた。 「お誉めに与り、光栄です。では、ちょっとだけ味見を…」 といいながら口端を甘くはんでいく。 高耶の口元に残ったミルクの泡を美味しそうに味わうと、直江は微かに笑いながら言った。 「おかしいですね…砂糖は入れてないはずなのに甘い味がする。あなたの、せいですね」 「言ってろよ…」 お互いに笑い合いながらも静かに視線を絡めていく。 笑い声が途切れ、視線が濃厚に絡まったとき、 一対のものが元に戻るように二人の顔が引き寄せられていった。 「おまえに起こされるまで、夢を…見ていたんだ」 名残惜しそうに唇が離され、やっと呼吸することを許された高耶がそう呟いた。 「夢?どんな夢ですか?」 「……内緒。だけど、とっても幸せな夢だった…」 幸せそうに、それこそ夢見心地で話す高耶に直江が不思議そうな顔をしながらも、真摯な眼差しになって言った。 「そう、幸せな夢だったんですね。初夢は正夢になると言いますから、きっと叶いますよ、その夢。」 直江は抱きしめる腕にいっそう力を込めながら、高耶に優しく諭すように囁いてやる。 高耶はその言葉に安堵したかのように微笑して小さく頷くと、軽く目を閉じた。 そして…いつまでもこのままでというように直江の胸へと顔を埋めていった―――― 全部終わったら、一度越後に帰ろう、直江 そして 四国に戻ったら 一緒に暮らすんだ… 海がみえて、風の吹くところに… 永劫の孤独を 埋めてあまりあるほどの幸福を おまえに |
『Bibliomania』の がじむ 様から
年賀のフリーSSを拝借(笑)してきました!!
お正月を迎えたあま〜い二人にウットリですvvv
直江の煎れたコーヒーが飲みたいっ!!と叫びそうになりました。
でも、きっと高耶さん専用…
二人の会話にニヤつきつつ、読むと…。
ラストの文章で、泣きそうになってしまいました(>_<)
新年早々、泣かされてしまった…。
凄いです!!
コーヒーのように甘く、ほろ苦いです;;
二回以降に読むと余計に、前半のあまい雰囲気のふたりが…っ!愛しいです!!
ついつい画力不足なクセに、イラストをつけてしまいました(^^ゞ
一応、がじむさんnの許可は頂いたんですが、なんかもっとこう…(汗)
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