Writing by.龍宮 斎 様



 突然降り出した雨に舌打ち、高耶は大慌てで近くの建物に避難する。
 台風が近付いているとは知っていたが、まさか降り出すなど思いもしなかった自分の行いを省みて、溜息をつく。
「っあーぁ!制服びしょ濡れじゃんかー!!くっそ、うっわ!ズボンの裾がぐちゃぐちゃ・・・」
 自分の姿を見て、また、溜息をつく。
 夏服を二、三枚仕立てている他の生徒とは違い、高耶はこの一着しか夏服を買っていなかったため、吐いた溜息は大きかった。
「・・・・・・しかしなぁー。どーすっかな・・・、今日はもうバイト終わったから良いけど・・・・・・」
 雨が小降りになったら走って帰ろうと思い、空を睨みつけていると、
「仰木君?」
 突然名前を呼ばれた。誰だと思いながら声のした方を向くと、ダークグリーンの車体が高耶のいる建物の側に停車している。
「あ、先生・・・こんにちは」
 車の運転席の窓から覗いている顔が、見慣れた日本史担当教員のものだと気付いて、思わず挨拶をしてしまう高耶に、教員は苦笑しながら、
「こんばんは、仰木君。・・・最終下校は五時だったはずでしょう?もう九時ですよ?」
「え、あ・・・・・・あの、その・・・・・・」
 普段からあまり生徒を叱ったりしない温厚な教師だと生徒から人気のある教員だから、届け出てはいるが、とはいっても、流石にバイトで遅くなったとは言えず、返答に困っていると、
「まあ、良いですから、早く帰りなさい。台風が酷くなる前に・・・」
 そう言ったのを見計らっていたのかと思うほど、タイミングよく雨が小降りになる。
「あ、・・・よっしゃ、帰れる!・・・・・・じゃぁ、先生さようなら」
「ええ、さようなら、気をつけてくださいね」
「はーい」
 間延びした返事をして、高耶は雨の降り出さないうちにと掛けていった。


 ものの五分も経たない内に再び大雨に降られた高耶は、制服のズボンの裾など気にしなくなるほどに全身が水浸し、濡れ鼠とはこのことかと思うほどに上から下まで濡れきってしまっていた。
「あぁーあ・・・」
 もう何も言う気が起きないのか、ぐっしょり濡れた高耶は、近くにあった建物へ再び避難をした。
 携帯を取り出し、濡れていない事にほっとして、手馴れた動作で、雨のせいで少しいつもより遅くなる旨をメールで妹へ送る。
「仰木君?」
「へ?」
 再び聞きなれた声が聞こえ、驚いて携帯から顔を上げると、色素の薄い髪を緩やかに撫で付け、濃い色のスーツを着こなした長身の男が立っていた。
「あ、直江先生・・・・・・こんばんは」
「こんばんは、また会いましたね。どうしたんですか?」
「へ?あ、いや・・・・・雨宿り・・・です」
 一見普通のようでいて、なにやら可笑しな答を返した高耶に、直江は苦笑した。
「そうですか、雨宿りですか。・・・家はこの近くでしたか?」
「あ、ああ・・・はい。あの通りを越えたとこにある椎垣団地です。あ、あの!遅くなった事に言い訳はしませんけど、雨が止んだら、まっすぐ帰りますから!」 
 叱られる前に謝ろうという意図が完全に分かってしまうその台詞は、高耶の生真面目さからのものであろう、それを副担任である直江がわからないはずが無い。
 高耶は、家庭に事情があってバイトを始める際も、しっかり届けを出し、授業も比較的真面目に受け、テストの点数もそんなに悪くは無い。
 少し人見知りをする方であり、一見すると不良かと誤解しそうな感があるにも関わらず、教員からの受けは悪い方ではない。むしろ、「放っておけない」と思うのか、子供のいる教員や兄弟のいる教員から好かれているようである。
「・・・そうですか、それは良いですが。そのままでいると、風邪引きますよ?最近涼しくなって来てますから」
「あ、はい・・・・・・」
「私の部屋、このマンションなんです」
 家まで送るから体を暖めて帰りなさいと続ける教員に、恐縮しながら、大丈夫だという生徒は、雨が未だ激しく降り続いているにも関わらず、逃げ出すように駆けてていこうとする。
「ちょ、ちょっと、待って。椎垣団地でしょう?走ってもかなりかかるでしょうに、本当に、風邪引きますよ」
 そう言って、走り出しかけた高耶の腕を捕らえた。
 気まずそうにしている高耶に、微笑んで、
「迷惑じゃなかったら、私の部屋に来てください、ね?」
 そう無理矢理言いくるめられて、直江の部屋の玄関に来てしまった高耶は、おずおずと、
「・・・す、すみません・・・」
 といいながら、 直江に付いて、彼の部屋へと入っていった。
「すみませんね、汚くて。あ、着替えとタオル用意しますから、お風呂入ってください。そのドアですよ」
「・・・・・・あ、はい。どうも」
決まりが悪いのか、無愛想な返事をして、風呂へ向かう。
その後姿をみて、男は、口端を歪めた・・・・・・。







<終わり?>







斎さんから、30000HITお祝いに頂きました〜〜〜vvvv
直江先生!!カッコイイーーーッ!と絶叫しつつも、その後の高耶さんが気になります…。
でも、直江さん『教師』だし!!
でも。高耶さんを前にしたらそんな肩書きなんて、風前の灯状態ですか?!
えぇーーーん(>_<)、
続きが気になってしまいますよぉ!!
「?」が付いていたと言う事は、期待してもイイのでしょうか?!(是非、続きはウラで& )

本当にありがとうございまいした!!

2004.9.24



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