『あの空へ』 by 葉八水 様

くしゅん
景色を見ながら畳の上に座り込んだ高耶が小さくくしゃみをした。
「風が冷たくなりましたね。」
そう言って直江が上着をかけてこようとするのを「いらねーよ」と払いのけた。
しばらく宙をさまよった直江の手は、その中に高耶を捕まえた。
「なっ!」
少しの反発を口にしてはみるものの、抵抗はしなかった。
紅葉が奇麗ですから、と直江に連れてこられた京都の旅館。
この部屋からは色付いた木々が良く見える。
始めは景色に見とれていたが、次第に意識が背中に集中してしまう。
背中の温かさが心地よくて、高耶は目を閉じて背中を預けた。
今だけは、二人にして欲しい。
世界から二人を切り離して、オレとおまえ、二人だけの時を刻んで・・・。
「高耶さん」
いつもの声が、耳元に降ってくる。


直江は、車の移動で疲れて寝ている高耶を部屋に残し、一人露天風呂に浸かっていた。
「まいったな・・・」
理性が利かなくなっている。
何を今更と思う。
別にギャラリーがいる中押し倒してもいいのだが、警察に通報されて変質者扱いなんて、とんでもない。
「いい湯だ」
顔を上げると、赤く燃えていた空が次第に闇へ近づいている。
赤から紫へのグラデーション。
直江はふと目を細める。
あの頃は、何度も目を留めた空。
壮大な残照―――。


「あれ?」
高耶が目を覚ますと一人だった。
さっきまで彼に背中を預けて眠ってたのに。
気付かなかったのは、熟睡してたのか、肩にかけられた上着にのこる温もりのせいなのか・・・。
部屋の中を見回すと、浴衣が一組使われていた。
どうやら一人で温泉に行ってしまったらしい。
いまさら傷を見せたくないわけでもないだろうに。
「どうして・・・」


直江が部屋に戻ると、高耶が上着を畳に叩きつけている所だった。
「高耶さん・・・。何やってるんですか?」
高耶は直江を懸命ににらみ付けようとしているが、心無しか顔が赤くなっている。
「オレより先に湯に浸かるとはいい度胸だな?直江」
「すみません」
高耶の上目使いが可愛くて、直江は思わず微笑んだ。
「理由は後で話しますよ。それより、高耶さんも温泉入ってきて下さい」
ね、と言われて高耶は渋々部屋を後にした。


高耶は温泉に顔半分まで浸かったり出たりしている。
浴衣姿の直江が目に焼きついている。
色っぽかったよなぁ・・・。
湿った髪が・・・。
「あぁ、もうっ!」
高耶はそのままお湯の中に沈んだ。
いつからこうなったのだろう。
あの男には敵わないと思う。
でも惚れているのだから仕方ない。


「はぁ、気持ちよかった〜」
部屋へ戻ると直江は行儀よく座っていた。
高耶もテーブルの向かいに座る。
「なぁ、なんで一人で入ったんだ?」
気になって尋ねてみるが、直江はただ微笑むばかりである。 「その理由は後で話しますよ」
「後々って、言い訳先伸ばしにするみたいに・・・」
そこまで言って高耶は固まってしまう。
(後って・・・後か!?!)
こちらを見つめてくる直江と目が合う。
高耶が耐えられずに目をそらすと、いつの間にか直江が横に来ていた。
「な、何だよ」
「明日の事なんですけど、奈良の方まで行きませんか。あなたに見せたいものがあるんです」
そう、真剣に直江が告げたので、高耶も真顔で直江を見つめ返した。
「あぁ」
高耶が頷くと、直江はふわりと微笑んだ。




『not〜出会えなかった喜びたちへ』様の「1503」を踏みキリリクで頂きましたvv
何故でしょう…(涙)
「あま〜い、直高が読みたいです(^o^)丿
旅行とか行ってたりすると、もっと嬉しいです♪」
と、お願いしたところこの小説を頂きました〜♪
めちゃくちゃ、美味しいです!!
でも、続編期待してしまいますvvv
穏やかな、直江vv …耐えているんですよね。
それに、ちょびっとイラついている高耶さんvv
続編では、頑張れ!直江ーーーッ!!
…続編貰えると、思い込んでますよ。私!


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