Mad dog's tea party
〜ユウウツな雨降り休日の過ごし方〜

- 2.EARL GREY-


「紅茶にも、色々な種類があるんですが、高耶さんは何がお好きですか?」
「えっ?紅茶の種類って…レモンティーとかミルクティーとか??」
「違いますよ。それは飲み方の種類で、私が言っているのは茶葉のことです」
そういうと、直江のカフェコレクションの中からいくつかの缶を取りだしてきた。
コーヒーは豆から。紅茶は葉から淹れるのが、いかにも直江らしい。
「茶葉って…ああ、普通の緑茶を淹れるのと同じことだな」
「え…ええ。確かに元は同じ葉で発酵させるか、させないかで紅茶と緑茶になるんですが…淹れ方も違うんですよ。
面白いからちょっと見てて。葉は、どんな飲み方もできるアールグレイにしましょう」
直江は慣れた手つきでダークグリーンの缶を開けると、ガラス製のポットにティースプーンで3杯茶葉を入れた。
「どうして3杯も入れるんだ?」
二人で飲むにはちょっと入れすぎではないかと思った高耶が不思議そうに聞いてきた。
「2杯は私たちの分、もう一杯はtea for pot といって、この余分に入れた一杯がおいしさを増すんですよ。
あ、話しているうちに湯が沸騰したようですね」
ケトルが沸騰したことを知らせる音をけたたましい程に立てている。
見ているだけではつまらなくなったのか、直江が動くよりも先に高耶がそれを取り上げた。
「これ、入れてもいいか?」
「はい。それでは、勢いよく湯をポットに注いで下さいね」
高耶が注意深く、それでいて勢いよく湯を茶葉の入れられたポットに入れていった。
すると、
「へえ〜。こんな風になるんだ」
「ね、面白いでしょ。紅茶を美味しく入れるには、このジャンピングといって葉っぱを充分にポットの中で対流させることが
必要なんです。それには沸騰したてのお湯でないとダメだんですよ。
お湯を冷ましてから淹れる玉露や煎茶なんかとは違うでしょ?」
「ふ〜ん。同じ淹れるって言っても、いろいろあるんだな…」
関心したように言いながら、高耶はガラスポットのなかで上下する葉っぱを興味深そうに見ていた。
始めは雨で退屈していた高耶だったが、直江の蘊蓄を聞きながら過ごすうちに機嫌も治ってきたようだ。

この様子なら午後からは甘い時間が過ごせるかもしれないと、やはり紳士ではなかった直江は考える。


「もう充分に抽出されたみたいですし、あちらで飲みませんか?」
直江はサイドボードからティーカップを取り出すと、きっちり二杯分に注いでいった。
そしてソファーに座る高耶に一方を差し出し口に運ぶのを見ると、隣りに腰を落ち着けた直江も一口飲んだ。
「ん〜。美味しいっ。ホントだ。ティーバックで淹れるのよりも断然美味い!何て言うか、香りとかも違うよな」
「でしょ?気に入ってもらえましたか?」
「うん。……あ。このカップ!」
「え?カップがどうかしました?」
「いや…あのさ、この間ねーさんと買い物に行った時に欲しがっていたんだよ、これと一緒のを。でも値段書いてなかったけど高そうだから諦めるって。そのうちどこかで手に入れてやるからいいってさ。
おまえ、きっとこれねーさんに狙われているぞ」
「しっ…高耶さん。こういう日はあまり噂話はしない方がいい」
「何で?」
「昔から言うでしょ。呼ぶより誹れって…」
「ん、そうなのか?だけど、ねーさんがさ…」
「ダメですってば」
「んんっ……」
いきなり高耶は唇を塞がれていた。そのまま深く口付けられていく。

が…

「…高耶…さん…」
「だって……おまえが悪い!」
ソファーに押し倒された瞬間、直江は頭から紅茶を被っていた。カップを手にしたままに身体を反転させられたので、バランスを崩し、そのまま直江にぶちまけてしまったようだ。頭から紅茶を滴り落とした直江が恨めしそうな貌で見てくる。
「ははは。そんな怒こんなって!まさに、水も滴るイイ男って所だよなっ」
などと軽口を言ってみるが、直江には通じていないらしい。
「責任取って下さいねっ」
そう言うと、濡れたものも拭かずに高耶を抱き上げていった。
「ちょ、ちょっと何キレてんだよ。これぐらいのことでっ。大人げないぞ、直江っ」
「大人げなくて結構です。紅茶で濡れてしまった分、しっかりと洗い流してもらいますからね」
「ええっ。それって…まさか…」
「一緒にお風呂入ってもらいます。それにあなた、退屈だったんでしょ?お茶でゆったりと朝を過ごした後は、気怠い午後を過ごすのもいいですからね」
「おまえっ。今日は英国紳士を気取るんじゃなかったのかよっ」
「紳士はもう終わりです。それにお忘れですか?私は日本の武士、もののふですよ。
武士がこうと決めたことは、最後までやりきります」
「決めたことって、何を決めたんだよっ」
「もちろん、あなたとの……ですよ…」
耳元で囁かれ、一瞬ゾクリとした高耶だったが、抵抗は続く。
「やめろっ。オレはそんな爛れたことを昼間からシたくはないんだっ」
その時、高耶はもしかしたら千秋助けろっと心の中で叫んでいたのかもしれない。
まさにタイミング良くドアフォンが鳴らされた。
「ほら、お客さんだぞ」
漸く下へと降ろされた高耶が睨み付けるようにして言ってくる。
「別に放って置いても構いませんよ。どうせセールスか何かでしょ。それよりも…ね?」
と、今度は高耶の身体を壁際に押しつけるようにして言ってくる。両腕を押さえつけながら首元に顔を埋め、あろうことか舌まで這わしてきた。
「やめっ…こんなところで…」
ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。…………
お前は高○名人かっ!というくらいに連打されるドアフォン。こんなことをしてくるのはただ一人。
『千秋!』と、嬉しそうな高耶。
『長秀!』と、恨めしそうな直江…

「あいつなら尚更出なくていいです、高耶さん。放っておいたら諦めてそのうち帰るでしょう」
今日はせっかく雨も降っていることだし、怠惰な休日を高耶と過ごすと決めた直江だ。ここで邪魔されては困る。
昨晩だけでは足りなかったし。
なのに、
「せっかく雨の中を来たんだから、いくら千秋といえども可哀相だろ。入れてやれよ」
今日は雨が降ってしまったことだし、直江の言うように何もシないで過ごそうと決めた高耶だ。ここでヤられては困る。
昨晩の疲れもあるし。
だから、
「呼んでくる!」
直江の隙を見て腕をすり抜けると、追いすがる間もなく高耶は玄関へと駆け出して行ってしまった。




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『Bibliomania』様の「21000」を踏みキリリクで、頂きましたvv 第二段♥
直江の心情を思うと…(^o^)丿←喜んでしまっているし;
見事!そして少々ぎこちなく外す高耶さんが、もうッ!!にへら〜と頬が緩みっぱなしです♪
ふふふ♪今回のツボはゴールデンルールのうんちくを語りながら、見た目紳士に紅茶を煎れる直江氏v
私までジャンピングしてしまいそうです!
そして、来客〜v 二名様、ご案内〜vv
直江の苦心をよそに、続きへGO!です♪

2004.4.21

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